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52 母なる台所 セサミン



母はいつも台所にいた。
キッチンとは決して呼べないあの台所でいつも忙しそうに食事の支度に追われ、同じタイミングで食卓についたことがなかった。
私が幼い頃はそんな母の後ろ姿が当たり前だったが、私や姉が大きくなり一緒に台所に立つと、とても嬉しそうに歓迎してくれた。
きっと、母もダイニングでの会話にいつも参加したいと思っていたのだろう。
「台所に女は二人もいらない」と昔の人は言ったけれども、我が家にはいつも二人か三人が通路を阻みながらも一緒にたっていた。

台所はまるで喫茶店。
学校から帰って必ず立ち寄るところ。
そこには恋愛や友人関係、いろんなことを知っている先輩が待っていて、多くのアドバイスをお茶菓子付きでくれる。
高校生の頃、母が食事の支度をするのを手伝い、時にはつまみ食いをしながら、毎日のように話していたのを覚えている。
好きな人がいた私に、母は自分と父の若い日々を懐かしそうに思い出しながら、彼女なりの恋愛観を真剣に伝えた。
友人と喧嘩をした時も進路に悩んだ時も、私の駆け込み寺はあの母が忙しく動く台所。
そしてその時に私が教わったものは、そういった人間関係に関するものだけでなく、台所のあれこれや母の味だったのだ。
お手伝いをしているという意識はなかったが、話している間にお皿を洗わされたり、包丁を持たされていた。
最近になって、自分が作る煮物が母のそれと同じように少し甘めの味付けになっているのに気が付いた。
そして嬉しくなった。

台所で繰り広げられる創造の世界はお料理だけに留まらず、例えばそれが私の人生観であったり、母との思い出であったり、家族の元気の源であったりする。
美味しいものを作り、お腹いっぱいに食べて、時々誰かと台所で語らう。
そんなことをしながら私は台所で…というよりむしろ母から元気を貰った。

台所は魔法が生まれる不思議な場所。
少し濃すぎる味付けの料理に文句をつけていながらも、しばらく食べていないと恋しくてたまらなくなる。
美味しかった料理もまずかった料理も関係なく、私を母のもとへ向かわせる魔法がかかっている。
さぁ、今度は私が魔法をかけよう。台所と温かい食卓を材料にして。









51 朝ごはんにかける情熱 いくこ 寄稿者のホームページ
私は、朝ごはんにかける情熱だけは誰にも負けないつもり。
我が家では、家族そろってごはんを食べられるのは朝ごはんだけ。
昼は夫はたいていお弁当、上の息子は大好きな給食、私は、ひとくちふたくちたべてはうろちょろする二歳児とせわしないおひるごはん。
夜は、私と子供たちは、たっぷり遊んで汚れた身体を洗ってからなのでパジャマで、どらえもんやポケモン、犬夜叉やテニスの王子様を見ながら。
私はせかせか、子供たちはほとんどたべものを見ないでテレビに没頭しているのでゆーくりと。
夫は11時すぎに帰ってきて、おそいおそい夜ごはん。

だからこそ、朝ごはんはたいせつ。
家族が全員一緒の唯一の食事だし、朝ごはんを採らないと日中身体も頭もよく働かない。
朝こそきちんと糖質とたんぱく質やカルシウムなどを採ってほしい。
だから、朝ごはんはがんばる。
上の子が小学校にあがってから朝食の時間が8時から7時にくり上がったので、なかなかたいへんだけど。。。

結婚したての頃、よく夫とけんかしたのが朝ごはん。
私の育った家では、家族7人揃って食事をするのは稀だった。
家族そろって旅行したことも、外食したことも、ない。
私の育った時代は、父親はもっぱら働き手だった。
育児や家事は母親の仕事。
家族そろって何かをするのがたいせつ、という風潮ではぜんぜんなかったように思う。
だから私も、自分が家庭を持つまでは、家族全員そろって会話をかわしながら食事をとるのがどんなにあたたかく豊かなものか、ぜんぜん知らなかった。
そして朝ごはんのたいせつさも。

子供時代の朝の食卓は、ごはん、おみそしる、おしんこ、ふりかけ。
それだけだった。
納豆や、残りものの煮物もあったのかもしれないが、子供時代は納豆も煮物も嫌いだったので、記憶にはない。
だから、結婚して数年は、ごはんを炊いて、おみそしるを作って、あとはふりかけか納豆。
それがあたりまえだと想っていた。
卵焼きを作っても、夫はぜんぜんたべてくれなかったし。
だからある日
「朝ごはん、もうちょっとなんとかしたら」
と言われたときは怒った。
「私はこういう食事で育った。あなたはどうだったの!」
と詰問しても、はかばかしい答えはかえってこなかった。
でも、それからいろいろ朝ごはんについて、夕ごはんよりもずっと思考をめぐらすようにはなった。

私は朝5時に起きる。
夫と子供たちはごはんができる7時まで寝ている。
ごはんができる頃には私はけっこうお腹がすいているけれど、夫と子供たちはそうではない。
食卓についても10分以上、何も手をつけず、ぼんやりテレビを見ている。
私は
「ほらほらこうしている間もごはんやトーストはどんどんさめていく。お茶やおみそしるもすっかりぬるくなっていくよ。一生懸命作ったのだから一番おいしいところを食べて欲しいのに!」
と口に出したい。でも言わない。
言ったらそのぶんまずくなるだけだから。
とにかく私だけは、あつあつのおいしいうちにと、一人でせっせと食べている。

いかに家族であっても「おいしい」と「食べたい気持ち」は一人ひとりちがう。
他の家族はそうでなくても、私は、朝がいちばん食欲がある。
ひとくちひとくちが身体にしみわたり、今日一日元気で育児や家事をこなす源になる。
私は自分のこういう気持ちをたいせつにしたい。

朝食がいちばん大事なので、夕ご飯よりもずっとがんばって作る。
朝は和食のごはんはあまり登場しない。胃にもたれるのだ。
炊飯器で炊くので、手間はずっと少ないけど。
昨日も朝、お米のごはんを食べた後気分が悪くなって困った。
私の身体にいいのは、全粒粉パンかオートミールとそば粉のパンケーキ。
ヨーグルト入りのスコーンや全粒粉とライ麦のbpブレッド。
低インシュリンダイエットに凝っているので、強力粉と薄力粉の全粒粉やライ麦粉、オートミールなどをインターネットでとりよせている。
粉は300g、いろんな種類の粉をその日の気分でブレンドする。
あとはスキムミルクを入れたり、ヨーグルトを入れたり、ときには卵や固めに煮た豆を入れたりして、目や手で加減して混ぜあわせる。
そして、パンなら発酵させ、パンケーキやスコーンなら冷蔵庫で生地をねかせた後、オーブンやフライパンで焼く。
合間に夫のお弁当も作る。
バターはカルピス有塩バター。うちの近所で箱なしで780円。
これだけは贅沢している。発酵バターや無塩バターは我が家好みではない。
あとは息子の好きなはちみつ、1パック100円なので常備してある植物性低脂肪クリームをホイップしたもの、自家製のジャムは苺とルビーグレープフルーツ。
最近は、入江麻木さんのレシピのカスタードクリームも時間があると作る。
休日のブランチにロシア風のクレープを焼いたときは、カスタードクリームと生クリームをのせたものが大人気だった。
私と下の息子がゆで卵大好きなので、ゆで卵はたいていいつもある。
サムソーチーズも。
生野菜もたっぷりと。マヨネーズ、だし醤油、いりごま、ヨーグルトであえた自家製ドレッシングで。
飲み物は、上の子はミロ、夫と私はトワイニングのアールグレー、下の子はミルク。

スコーンは土器典美さん、パンケーキは堀井和子さんのを私流にアレンジしている。
パンについては、本当に試行錯誤。
世の中には、絶対に失敗したくない、まずいものは作りたくない、だから誰かが考えたおいしいレシピで満足している、という人がとっても多い。
でも、私はへそまがりなの。
失敗してもいいから、いろいろ考え、反省したり発展させたりして、レシピを開拓している。
これが至福の時。
頭で指先で、何かを作り出すのが愉しくてたまらないのだ。Be Creative!

でも。。。
息子よ、君はハハが作った茶色くて固いパンより、スーパーの甘くてやわらかいパンのほうがずっと好きなんだよね。
わかってるんだけど。。。ごめんなさいね!ゆるしてね!
 



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※エッセイ中の画像・イラストは該当エッセイの執筆者によるものです。