トップページに掲載した「今日の美味小話」のバックナンバー。
食べ物に関する、ひめのミニミニおしゃべりです。
 since 09/2001

  ★このキュートな「ひめキャラ」は読者のともみちゃんが作ってくれました! 
November,2001
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今日の美味小話 *  11/30

 かつを昆布。


 京都のお土産に佃煮をいただきました。京都、大徳寺東門前の「一休こんぶ 松田老舗」の昆布の佃煮です。
 この松田老舗は明治時代末に創業なので、察するに、大徳寺が千利休ゆかりのお寺であることから「一休こんぶ」なのでしょう。お店構えが時代を感じさせるだけでなく、おじいさんおばあさんがお店で応対なさっているそうで、店内は静かな時間が流れているようです。

 お土産にいただいたのは「かつを昆布」(手前)と「山椒昆布」です。佃煮というとわたしなぞは江戸前の甘辛い佃煮を思い浮かべます。が、ここの佃煮はねっとりとした甘さが無く、きりっと引き締まったお味です。江戸前のような、ご飯やお茶無しには食べにくい強い味ではなく、控えめな、それでいてボケた印象は決してなく存在感のあるお味に仕上がっています。そう言えば、京美人も控えめながら芯の強い女性、というイメージがあります。



 記すべきは「かつを昆布」。昆布の佃煮が軽やかなかつおぶしの衣をまとっています。この糸のように細かいかつおぶしがふんわりと空気を含んでいて、江戸前の佃煮に慣れた口にはとても新鮮なのです。これはお茶漬けで楽しむよりは、そのままご飯と共に楽しむ方が良さそうです。

 炊きたての銀シャリのてっぺんにこの「かつを昆布」を乗せて、ご飯の湯気で立ち上る「かつを」の香りを吸い込む。口の中でほどよく米粒とかつおぶしが空気感を含みながら一体となり、噛み締めると主役の昆布が控えめにじんわりまったり絡み付く。思わず姿勢を正して丁寧に味わいたくなる、そんな佃煮なのです。

 この「かつを昆布」が来てからというもの、我が家ではどんなおかずも霞みがち。
「ご飯とあの佃煮があればいいよ」
家人はこんなことを言いました。でも悔しいけれど、わたしも同じことを思うのです。
 わたしの作るおかずを贔屓目(ひいきめ)に見ても、炊きたてのご飯に「かつを昆布」、それにお味噌汁と白菜の浅漬けだけ、それだけで十分「美味しいごはん」が成り立ってしまうのです。
 その意味では、お料理好きの主婦を泣かせる「かつを昆布」。でもそうだわ、こういうときこそお味噌汁もお漬物も、気持ちを正して丁寧に作ろうじゃありませんか。白米とお味噌汁とお漬物は和食の原点でもあるわけだし。
 俗にお料理屋さんなどの場合、「飯(白米のご飯)の旨い店がほんとうに旨い店だ」というグルメ評があるくらいです。シンプルなものほど難しい、あらためてこの言葉が胸に染みました。

 書き遅れましたが、「山椒昆布」も優しさが滲むバランスの良いお味です。山椒のパンチと甘辛味こそが佃煮だ、という向きには少々物足りないかもしれません。が、それだけでお茶請けとして十分にして過度に過ぎないお味は、わたくし好みでありました。


 お土産の袋には赤い紅葉がそっと入っていました。旅行に出かけた知人の優しい心遣いです。かさこそと音のする紅葉を陽にかざしてみたら、美しい京都の山々のかけらが見えました。



      ■一休こんぶ 松田老舗■ 一袋500円
        e西陣HP〜食品紹介
今日の美味小話 *  11/22

 お料理教室。

 今日は「キッチンひめ」の第一回お料理教室でした。と言っても、生徒さんは2人だけ。わたしが日頃お世話になっているご近所の方々です。

 もともと、わたし自身はお料理教室なるものにはいっさい通ったことがありません。強いて言えば、家庭科の調理実習くらいです。
 本当はお料理も基本的なことは、先生にきっちり習った方が良いのかもしれません。けれどもわたしは内心、お料理教室には懐疑的なところがあるのです。
 何人かでひとつのお料理を作って、ほんとうに後で自分で作れるのか?お教室のようにはお道具も調味料も揃っていない自分のキッチンで、ほんとうに後で同じように作れるのか?
 こんな風に思っていたので、自分でお料理教室をすることは考えていませんでした。それに「○○先生に師事」とか「○○講師資格取得」なんていう肩書きもわたしには無いし。
 それなのにどうしてお料理教室をすることになったのか、すこしお話しましょう。


 今回生徒さんになった方々には、今まで何度かわたしのお料理を食べていただく機会がありました。
「ねえねえ、そのうちお料理教えてね〜」
「いいわよ、そのうちね」
幾度となく、こんな会話が交わされていました。そして先日、ちょっとしたことがついにきっかけになったのです。
 ある日、わたしがシフォンケーキをお裾分けしたところ、そのご家族にとても好評だったらしく、連絡がありました。
「シフォンケーキ、作ったことが無いのだけれど作ってみたいのよー」
「じゃあ、今度いっしょに作ってみない?」
 この話を聞いた別の方は、ちょうどお子さんの学校にバザーに出すシフォンケーキ作りに苦戦していました。
「でもね、あんまり上手くいかなくて、結局お友達に頼んじゃったのよ。できたらわたしも教えて欲しいわぁ」

 というわけで、記念すべき第一回は「抹茶のシフォンケーキ」。ケーキを焼いている間に、お野菜たっぷりのスープとショートパスタ、フレンチトーストの簡単なランチも作ります。
 生徒さんのご希望で、お宅に伺う出張お教室にしました。家庭用のオーブンは機種によってかなりクセがあるので、これは良いアイデアです。わたしもいくつか使い勝手の良いお道具を持っていきましたが、基本的にはそのお宅にあるお道具と調味料で作ります。みんなお互いよくよく知っているお友達ですから、半分、お宅持ち周りのランチ会のようなミニお教室。楽しく時間が過ぎていきました。



 お料理に限りませんが、主婦のお仕事は孤独なものがほとんどです。生活の基本を支える仕事であるにもかかわらず、親以外には学校の家庭科でほんのお触り程度にしか習うことも無く、毎日同じような繰り返しで、しかもあまり感謝も評価もされません。これでは主婦が閉塞感に苛(さいな)まれるのも無理はないし、またよほど興味でもない限り、家事を自分とは異なるアプローチで楽しんでみることも少ないでしょう。
 家事の重要性を最も感じているのは主婦、でも家事を最も楽しめないのも主婦なのです。だから、いろいろな家事のノウハウ本やお教室が流行り、○○の達人とか研究家がもてはやされ憧れのまなざしを浴びるのでしょう。

 お料理について言えば、わたしは家庭料理はプロのようなものになる必要はないと思います。
 栄養やバランスを考えてお野菜が多いこと、なるべく化学調味料は控えて素材の味を大事にすること、減塩を心がけること、アレンジが効くものであること、そしてもちろん愛情がこもっていること。
 わたしは家庭料理ではこんなことがとても大切だと思うのです。そしてこれは、ネットでもお教室でも「キッチンひめ」で伝えたいことのひとつなのです。


 さてお教室、肝心のお味は?というと、、、ふふふ、好評でございました。
「コンソメの素を使わなくても、こういう味が出るのねぇ」
「卵をあんなにしっかり泡立てたから、こんなにふわふわのケーキが出来たのねぇ」
ヨカッタヨカッタ。お役に立てて嬉しいです。わたしもおふたりから学ぶところがたくさんありました。何より、みんなでお料理して食べるのは楽しいですものね。

 このクラブ活動のようなミニお料理教室、はてさて、いつまで続くでしょうか。とりあえずは次回が楽しみです。
今日の美味小話 *  11/21

 天のかけら。

 漆黒の夜空をすっと落ちていく流れ星。
「あっ、流れ星!」
「えっ、どこどこ?」
「あーあ、願い事する前に消えちゃった」 
流れ星は大抵こんなふうに、あまり人目に触れることもなく、儚く消えてしまいます。

 ところが18日の深夜(19日未明)は違いました。条件の良い観測所ではピーク時には1時間に数千個の流れ星が降る、まさに文字通りの流星雨が大出現したそうです。遠くまで出かけて、しし座流星群をご覧になった方も多いでしょう。
 わたしも深夜2時半頃、たいして期待もせずにベランダに出たところ、ほんの15分くらいの間に10個も見えました。東京はあいにくの曇り空だったのですが、雲間を尾を引いて流れる天体ショウは、いっとき寒さを忘れるほど印象的でした。都会のこうこうと明るい夜空でもくっきりと流れ星が見られたのですから、実際には相当な数の流れ星が降っていたに違いありません。


 しし座流星群は約33年を周期として流星が数多く降り、時として大流星雨になることがあるといわれています。33年というのは母彗(すい)星のテンペル・タットル彗星(55P/Tempel-Tuttle)が太陽の周りを回る周期で、この彗星が回帰する前後の数年間は流星群は活発になります。
 初めてしし座流星群が注目されたのは、1833年11月13日早朝。北アメリカの東部を中心とした地域で記録的な流星が出現したのです。この1833年の大流星雨が今日の流星研究の大きな第一歩となりました。

 最近ではテンペル・タットル彗星は、1998年2月に太陽に最接近(回帰)し地球の軌道を横切りしました。そのため、1997年から2002年ごろまでしし座流星群が大出現し流星が数多く降る可能性が大きいとされています。
 多くの科学者たちは1998年に大出現を予測しましたが、残念ながら的中とは言えない状況でした。従来の理論では予測が外れることも多く、流星群の予報は非常に難しいものとされていました。
 そんな中、独自の理論から「98年はそれほどの出現は期待できない」と予測して見事的中させたのが、オーストラリアのR.H.マクノート(R.McNaugh)氏とイギリスのD.J.アッシャー(D.Asher)氏でした。マクノート氏はオーストラリアのサイディング・スプリンク天文台に所属、アッシャー氏はイギリスのアーマー天文台に所属する研究者です(アッシャー氏は日本スペースガード協会客員研究員)。
 両氏はさらに1999年、2000年もほぼ正確に的中させ、これによりにわかにマクノート・アッシャー両氏の流星群理論が注目されるようになりました。このアッシャー氏の予測に基づき、今年、日本中で大盛り上がりとなったのです。果たして予測は的中し、多くの方が夜空のショウをうっとりと眺めました。
 この一連を見るに、若き天才天文学者が新しい時代を切り開いたと言っても過言ではないでしょう。人類はまたまた進歩して、宇宙の神秘をひとつ謎解いたわけです。


 さて、今も昔も人々を夢中にさせる流れ星。その正体は何でしょうか。
 流れ星は、彗星から放出されて宇宙空間に漂う小さな塵(流星物質)が猛スピード(20〜70km/秒)で地球上に突入し、大気との衝突によって燃えて発光して見えるものです。
 よくある説明、「大気との摩擦で高温になって発光する」というのは正確ではないそうです。資料によれば、「もう少しわかりやすく書くと『衝突時のエネルギーにより、プラズマと呼ばれる状態になり光って見える』ということです」とありました。
 その大きさは消しゴムのかすやシャーペンの折れ芯ぐらい。ミリメートル単位の大きさがあれば、流れ星として見えるというから驚きです。
 しかしながら正体がわかったところで、わたしには流れ星は「宇宙の塵」と科学的に見えるよりも、なおのこと「天のかけら」が降ってくるように見えるのです。



 絶対的にはその存在はごく些少であっても、漆黒の闇夜を輝いて駆け抜け、人々の心を掴んでやまない流れ星。闇があるからこそ光り輝き、小さいからこそ宝石のように美しく、宇宙という定まりの無い世界をわたしという定点から見るから流れて見える。そう考えていくと、この世の中に絶対的な価値観というものはあり得ないのではないか、と思うのです。
 絶対的な幸福も無いけれど、絶対的な不幸も無い。
こんなふうに思うことができれば、ひとはもっと力を抜いて、謙虚に人生を享受する余裕を持つことができるのかもしれません。

 わたしという存在も、どんなにあがいても天のほんのひとかけら。日々をつないだ尾っぽを引いて、宇宙のほんの一呼吸のうちに天を駆け抜けて消える、儚い存在なのです。願わくは、鮮やかに輝くかけらになりますように。
今日の美味小話 *  11/16

 海のミルク。

 牡蠣(カキ)が美味しい季節になりました。
 カキは大変栄養値が高く、資料によればアミノ酸を20種類、ビタミン、ミネラルを10数種類、その他グリコーゲンや不飽和脂肪酸、また100g中に40gもの亜鉛を含んでいます。亜鉛をこれほど含む食品は希なのだとか。ビタミンやミネラル類が豊富なため貧血予防や疲労回復などに良く、またコレステロールや血圧を下げる働きが期待できるタウリンを多く含んでいるので、成人病の予防も期待できるそうです。さらに、カキはほかの貝類より消化吸収がよく、子供やお年寄りの食事にも良いとされています。水分が多く脂肪が少ないので(生食するかぎりは)低カロリーというのも嬉しいことですね。
 ちなみに、カキに豊富な鉄は吸収率の悪い栄養素です。そこで効率良く鉄を吸収するには、たんぱく質、ビタミンCをいっしょに摂ると良いと言われています。生ガキにレモン汁をたっぷりかけたり、ほうれん草やブロッコリーなどの緑黄色野菜と食べると吸収率が良くなります。乳製品も吸収を助けるので、グラタンやミルク煮、チーズ焼きなども良いそうです。

 英語の時間に、"Never eat oysters unless there's an R in the month."「Rが入ってない月は牡蠣を食べてはいけない」という言葉を習った記憶があります。
 Rがつかない月、すなわち5〜8月(May,June,July,August)はカキの産卵期にあたるため食中毒の危険を回避する意味があるのです。したがってこの言葉から、カキを食べるのに良いのはRのつく月、ということになります。実際、冬場のカキは旨み成分のひとつであるグリコーゲンを最も多く含み、風味も優れていて美味しいのです。
 もっとも、最近では夏場に摂れる「岩牡蠣」も注目されています。わたしは食したことがないのですが、かなり美味であると聞いています。→庄内浜の岩牡蠣


 さて、我が家お初のカキはたいてい「カキフライ」となります。今年は実はちょっとフライングしてお鍋で先に食べてしまったのですが、
「やっぱりカキフライを食べないと、、、」
ということで先日満喫いたしました。
 カリッとした衣の中をレアにするか、ミディアムにするかは好みの分かれるところです。我が家ではどちらかと言うとウェルダンに近いミディアムです。この揚げ加減はなかなか難しい。ちょっとでも油断しようものなら、レアかウェルダンになって却下となってしまいます。
 普通、揚げ物は衣の中の具の水分が飛んでいくパチパチという音でタイミングを計ります。が、カキフライの場合はこれでは遅過ぎです。一種の経験的時間予測に賭けることになります。

 揚げ加減と並んで重要なのは、フライにお約束のキャベツの千切り、それとカキフライにお約束のタルタルソースとレモンです。
 冬はキャベツも甘みを増して美味しい季節、たっぷり食べましょう。神経を集中させてできるだけ細く千切りにし、氷水にさっと放ちザルにあける。ふんわりと空気を含んだ優しい歯触りの千切りキャベツは、重要なベテラン脇役です。フライで重くなった胃をキャベツが爽やかにしてくれます。
 タルタルソースも余裕があれば手作りしましょう。半熟のゆで卵、玉ねぎ、ケッパーを刻んで、マヨネーズとレモン汁で和えればできあがり。

 カキフライが揚がったら、それっ!とばかりに大急ぎで食卓へ。ぐずぐずしていると余熱でどんどんカキが締まってしまいます。
 カキフライ→キャベツ→ご飯→ときどきお味噌汁、なんて美味しい循環なのでしょう。



 最近は「キッチンが汚れるから」と揚げ物を敬遠する家庭が多くなっているそうです。そんなバカな!
 そりゃあ、揚げ物は加減が難しいし、キッチンは油だらけになるし、カロリーも高いし、敬遠したくなる気持ちもわからないでもありません。
 でも、コロッケでも豚カツでもカキフライでも、揚げたてサクサクジューシーのフライはそれは美味しいですよね。フライとご飯とお味噌汁、定食でも定番の人気メニューであることも肯けます。

 揚げたてのフライを夢中でほおばって、「ああ美味しかった!」とお腹をさすって満足する、こんなちょっぴりお行儀悪いお食事も「おうちごはん」ならでは、です。毎日毎週はイケナイけれど、たまには思いっきり満足満腹のフライごはんしましょう。Rのつくうちに、ぜひカキフライで!

 生牡蠣のお話はまた次回に。
今日の美味小話 *  11/8

 「わかば」のたいやき。

 今日は美味しいたいやきをご紹介しましょう。新宿区四谷のたいやき屋さん「わかば」をご存知ですか?昭和28年創業の老舗です。

 ここのたいやきはチェーン店の大量生産とは違い、頑固そうな(失礼!)職人さんたちがひとつひとつ焼いています。ひとつの型が一匹分なので、職人さんたちはひとつひとつ生地とあんこを流しては火の上でくるりくるりとリズミカルに上下を返し、焼き上がっては型からはみ出た部分をひとつひとつ切り取る、という作業を黙々と続けています。
 「わかば」のたいやきの美味しさは、必ず尻尾までぎっしり入っているあんこと、パリッとした皮です。ほんのり塩味の効いたつぶあんは素朴ながらずっしりとした味わいで、薄くて香ばしい皮と素晴らしく調和しています。


 包み紙には、安藤鶴夫(演劇評論家、作家。1969年没)のこのような言葉が見えます。

     『鯛焼のしっぽには
         いつもあんこがあるように
      それが
         世の中を明るくするように


 「わかば」ではこの言葉を社訓としているそうです。すごいでしょう?たいやきへの愛情と誇りを感じます。
 何だか気恥ずかしくなるような安藤鶴夫のこの言葉も、いざ「わかば」のたいやきを前にすると「ごもっとも!」といたく納得して、すっかり食べ終わったときには心も満たされるから不思議です。


 夫がこの「わかば」のたいやきを買ってきてくれました。
「四谷の『わかば』って言うたいやき屋さんは有名なのよ。とっても美味しいの!」
というわたしの言葉を思い出し、近くを通りかかったついでに買ってきてくれたのです。

 何年ぶりかの思わぬ再会。少々大袈裟に聞こえるかもしれませんが、このたいやきにはささやかな思い出があるのです。
 わたしは中学・高校と四谷にある学校に通っていました。学校から家まで1時間かかるため、下校途中で寄り道する余裕は時間的にも無く、また当時のお小遣いでは金銭的余裕もありませんでした。そんな中で、冬休み中のクラブ活動の帰りに何度か寄り道したのが「わかば」だったのです。
 冬の暗い夕方、オーバーコートのボタンをきっちり上まで留めて北風に頬を赤くしながら、友人たちと駅の向こう側の「わかば」へ行くのはちょっとした冒険気分でした。おそらく学校から20分弱の道のりだったと思うのですが、未知のエリアに踏み入るようなワクワク感がよりいっそう「わかば」を特別なものに印象付けたのでしょう。包んでもらったばかりのたいやきを、
「アツアツだね〜」
「美味しいねぇ!」
と感動しながらお店の外でパクつくのは何と楽しかったことか!

 夫が買ってきたたたいやきは、ちょうど家に来ていた母にも「まあ、美味しそうなたいやき!わかばのね。」と大歓迎されたのでありました。家族で美味しさの確認作業をするのも、あの頃とはまた違う楽しさでした。

 お洒落な洋菓子や和菓子の上品な上生菓子と比べれば、どうしたってちょいと格下のたいやき。でも、「やっぱり『わかば』のたいやきは美味しいねぇ」と渋い緑茶をすするお三時は、もっと素朴で地に足のついたじんわりする時間。たいやきは、心底ほっくり一息入れる時間を楽しむためのお菓子なのかもしれません。


          ■わかば■ たいやき 1個126円
          全国和菓子協会HPYahoo!グルメ

今日の美味小話 *  11/7

 立冬。

 今日、11月7日は「立冬」です。暦十月の節で、陽暦の十一月七日頃。暦の上では、立冬から立春までの3ヶ月間(陰暦10〜12月)が冬とされます。「立冬」は「冬立つ」「冬来る」「今朝の冬」などとともに、冬の代表的な季語でもあります。

 北国ではもう初雪が降ったところもあるようですが、トウキョウはまだまだ秋が色濃い空気です。街路樹は少しずつ紅葉し始めていますが、都内の銀杏並木が金色の優美な姿を誇るのは今月下旬頃でしょう。我が家のベランダのブルーベリーも一枚また一枚と、ゆっくりゆっくり赤いお化粧を始めています。

 お散歩の途中ふと見上げると、小高い丘の上にすっくと2本の木が寄り添うように立っていました。冬の気配がわずかに滲む青い夕暮れ。寒風の中、2本の木の凛とした美しい姿は静かに心打つものがありました。

 木枯らし吹きすさぶ冬がまもなくやって来ます。今冬は背筋が寒くなるような事件やニュースが続き、経済環境も厳しさを増すばかり。
 冷たい風が吹けば吹くほど、ひとは温もりを求め、誰かに寄り添いたくなるのかもしれません。あなたには、そっと寄り添いたい大切なひとがいますか?親子、夫婦、恋人、友人、、、。
 自分にとって大切なひとが心寒いときにそっと寄り添ってもらえるような、そんな温もりあるひとでありたいと思います。


 本格的な冬将軍の到来はまだもう少し先のこと。でもそろそろ、あったかいシチューやおでんが嬉しい季節です。

 立冬、その響きは冬眠しない食欲を刺激する温もりの言葉。
今日の美味小話 *  11/6

 オトナっぽいナポリタン。

 誰でも一度は食べたことがあるだろう、スパゲッティ・ナポリタン。
 日本ではお馴染みの、このもっともらしい名前を持つスパゲッティが、実は日本で生まれたお料理であることは有名なお話です。
 イタリアに行って「ナポリタン、ペル・ファヴォーレ!(ナポリタンお願いします!)」といくら叫んでも十中八九、怪訝な顔をされるだけでしょう。

 生まれは何やら怪しげなナポリタンですが、わたしが小さい頃はまだイタリア料理と言えばスパゲッティ、それもナポリタンかミートソース、という時代でした。
 ピッツァなんて一般家庭には縁が無かった時代です。

 ごくたまの外食でのお子様ランチには、必ずと言ってよいほどナポリタンがついていました。
 そのナポリタンといったら、今思えば「具無しケチャップ炒めスパゲッティ」でした。
 赤いウインナーが申し訳程度に1個くらいついていたかもしれません。それでも子供心には「ナポリタンだぁ♪」と嬉しかった記憶があります。

 その後、母が家で作ってくれるようになったナポリタンには、ウインナーやら玉ねぎ、ピーマンなどの具がちゃんと入っていました。
 母のこのナポリタンが好きで、よくリクエストしたものです。
 大学生になると、喫茶店や学生食堂でナポリタンを食べることが多くなりました。
 特別な材料を使わないナポリタンは、ランチの定番でどこにでもあるメニューだったのです。

 どこで食べても、ナポリタンが「ケチャップ炒めスパゲッティ」であることに大差無いのですが、何故か今でもときどきお店でナポリタンを注文してしまいます。
 ケチャップべっちょりの上に、パルメサンチーズを山のように振りかけるチープな味。
 高級なナポリタンなぞ存在してはいけない。
 このチープさこそが、時折むしょうに食べたくなる味なのです。

 しかし、家でナポリタンを作ろうとするとき、このチープさでは困るのです。
 「困る」って誰もそれで文句を言うわけではないのですが、自分自身が納得できないのです。
 もう少しイタリアンっぽい、もうすこしオトナっぽい、ナポリタンにしたいなぁ。
 そう思って開発?した我が家の定番「ひめ風おとなナポリタン」はこんな感じ。



 お野菜たっぷり、ケチャップは使うけれど、マイルドに仕上げたナポリタンです。
 チープなナポリタンと、トマトパスタの中間のようなお味で美味しいんですよぉ〜!
 ポイントをご紹介しておきましょう。

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「おとなナポリタン」の作り方★

1、お野菜はたっぷり。
  玉ねぎ、ピーマン、あらびきウィンナーは必須。
  あとは気分でアスパラガスやパプリカなど。

2、最初にウィンナーやベーコンといっしょにニンニクも炒めて、香りを付けましょう。
  タカノツメはお好みで。
  正統派ナポリタンとしては炒めるときにはタカノツメは使わず、
  食べるときにタバスコというのが正しいでしょう(笑)。

3、味付けは4段階。すなわち、
  @お野菜といっしょに生のトマトを炒める。フレッシュ感が出ます。
  Aケチャップは  良質のものをたっぷり。ケチることなかれ。
  仕上げに、
  B生クリーム少々、と
  Cパルメサンチーズを使う。これでコクが出ます。

  パルメサンチーズは食べるときに振りかけるのが正統派ナポリタンなので(笑)、
  味付け用は控えめに。
  黒コショウをピリリと効かせれば、ほら、オトナっぽいナポリタンの出来あがり。

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 「けっ、ナポリタンなんてコドモが食べるものさ」
 などと思っている方、騙されたと思って、ぜひお試しくださいまし。

 ちゃんと美味しいオトナっぽいナポリタン。
 それなのに、です!たまーに家族から、
「喫茶店ナポリタンが食べたーい!」とリクエストがあるのです。
 ひめ風も好き、だけどケチャップべっちょりのチープなのも食べたい、そういうことなのだそうです。まあ、気持ちはわからないでもないけれど。
 リクエストはしばらく待たされたあげく、夜ご飯ではなく休日のブランチにパンと登場することになります。
 チープなナポリタンはパンにはさんで食べると美味しいのよね〜。

 オトナになってもコドモの心を忘れないということか。うん?

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